第8回:1980年代の30m2〜50m2未満は割安で種類も豊富
▼1980年代は実はコンパクトマンションの時代だった?
2000年代に入った当初、一般に専有面積30m2〜50m2未満程度のコンパクトマンションの分譲が急速に増加しました。主にシングルやディンクス、あるいはシニア層をターゲットに、専有面積を圧縮して手ごろな価格での販売によって需要を掘り起こそうという狙いでした。一人暮らしや共働き夫婦が多いことを念頭において、高度なセキュリティ機能を備え、面積の割には充実した水回り、収納を備え、コンパクトタイプといっても品質・性能の高さを追求、一定の居住性を確保しようとする物件が目立ちました。
しかし、この30m2〜50m2未満のマンション、実は1980年代にもたいへん多かったのです。東京カンテイの調査によると、図表1にあるように、1980年の新築マンションのうち30m2〜50m2未満の割合は11.2%を占めていました。1986年に7.7%と一桁台に落ちるまで、10%台を確保していたのです。2000年代にも30m2〜50m2未満のマンションが増えたといっても、新築マンションに占める割合はせいぜい6%台、7%台止まりで、1980年代のシェアには遠く及びません。
図表1 首都圏新築マンション供給戸数と専有面積30m2〜50m2未満の割合の推移 |
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(資料:東京カンテイ『マンションデータ白書』)
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▼1980年代の50m2なら1300万円で手に入る
1980年代当初の新築マンションの年間供給数は6万戸台から7万戸台と現在とほぼ変わらない水準。そのうちの10%以上のシェアを占めていたのですから、年間の供給数にすれば、6000戸から1万戸近い数字になります。年間供給戸数に、その年の専有面積30m2〜50m2未満の割合を掛けると、図表2にあるように、1981年、1982年には9000戸を超えていた計算です。
2000年代に入ってからコンパクトマンションが増えたといっても、年間6000戸超がせいぜいで、1980年代には遠く及びません。築年数の長い物件に目を向けたほうが、格段に探しやすいといえるでしょう。
図表2 首都圏の専有面積30m2〜50m2未満の新築マンション供給戸数推移 |
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(資料:東京カンテイ『マンションデータ白書』)
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当然のことながら、1980年代の中古マンションなら、最近の新築マンションや築浅物件に比べて、格段に安く手に入れることができます。東日本不動産流通機構の調査では、2006年の成約物件のうち築5年以内の1m2当たりの単価は50.67万円。50m2にすれば、2533.5万円。それが築26年〜30年になると1m2単価は26.27万円まで下がります。50m2で1313.5万円です(図表3)。ほぼ半値で手に入れることができる計算です。
図表3 築年別の首都圏中古マンション成約m2単価と50m2価格 |
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m2単価
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50m2価格
(単位:万円)
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築5年以内 |
50.67
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2533.5
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築6〜10年 |
42.72
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2136
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築11年〜15年 |
30.45
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1522.5
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築16年〜20年 |
27.74
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1387
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築21年〜25年 |
27.77
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1388.5
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築26年〜30年 |
26.27
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1313.5
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築31年〜 |
24.37
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1218.5
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(資料:東日本不動産流通機構『築年数からみた首都圏の不動産流通市場』)
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▼自分たちなりにリフォームして住む手も
前回触れたように、築20年以上の物件は最寄り駅からの距離も比較的近い物件が多く、利便性の高い場所に、手ごろな広さの物件を、手ごろな価格で入手できる可能性が高いといえるでしょう。
ただ、当時の30m2〜50m2のマンションは、最近の物件に比べると構造・設備などの基本的な性能がかなり低い水準にあることはいうまでもありません。1981年以降の新耐震基準に基づいて建設された物件か、それ以前の物件でも、新耐震基準をクリアしている物件がありますから、そうした安全性をまず確認しておきましょう。
間取りについても、1LDKやワンルームで広く使うというよりは、2DKなどの各居室の面積が小さいタイプが多いようです。ですから、最近の物件並みの居住性を確保するためには、最新の設備への取替え、間取変更などある程度のお金をかけてのリフォームが欠かせません。もちろん、どこまでリフォームが可能なのかは、事前に専門家に物件を見て貰った上で確認しておく必要があります。それでも、価格の安さを考慮すれば、十分検討に値するのではないでしょうか。