第3回:「品確法」の住宅性能表示以前・以後で大違い
▼マンション業者が品質管理に力を注ぐ契機に
わが国の住宅の性能を考える上での重要な出来事として、2000年4月に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(以下・品確法)を挙げることができる。
品確法は、
1.新築住宅に関して10年間の性能保証を義務化
2.住宅の性能に関する表示制度の実施
3.住宅を巡る紛争に関する紛争処理機関の設置の三本柱から成る。
1の性能保証制度は、すべての新築住宅について引き渡しから10年間の性能保証を義務化するもの。対象になるのは建物の構造を支える部分、雨水の浸水にかかわる部分のみだが、それでも法律で義務化されたことの意味は大きい。
マンション業者は、引渡しから10年以内に瑕疵などが発覚した場合、無料での補修や損害賠償責任などの義務を負うことになったのだから、欠陥問題に対してより慎重にならざるを得ない。設計、建設などさまざまな面で品質管理の徹底を図る契機になった。
▼専門家が性能を評価する性能表示制度
2の性能表示制度は、周知徹底期間をおいて2000年12月から本格的にスタートした。これは、第三者機関の建築の専門家が耐震性能、耐久性能など住宅の性能に関する9分野について評価し、その性能を等級などで表示する仕組み。2005年には防犯性能が加えられ、10分野に拡大された。
消費者からすれば、全国一律の基準で評価書が作成されるため、比較検討しやすくなり、専門家が評価してくれるという安心感もつながる。
この性能表示制度には、設計段階で評価する「設計住宅性能評価」と建設段階で評価する「建設住宅性能評価」がある。建設住宅性能評価に当たっては基礎段階から4回にわたって専門家が現場をチェックするので、より安心感が高まるのはいうまでもない。
しかも、建設住宅性能評価書を取得している住宅については、品確法の第3の柱として設置された紛争処理機関に1万円で調停を依頼できるというメリットもある。住宅リフォーム・紛争処理支援センターのまとめによると、これまでのところ紛争処理機関に持ち込まれた調停のうち、ほぼ半数近くが調停によって解決している。
▼建設住宅性能評価書を取得している物件を
ただし、先の性能保証制度がすべての住宅に義務化されているのに対して、性能表示制度は任意の制度。分譲マンションの場合には、分譲業者が性能表示を行うかどうかを決めることができる。
グラフにあるように、性能表示制度がスタートした当初は、性能表示を行っているマンションは年間数万戸程度だった。しかし最近では10万戸を超え、2006年度の設計住宅性能評価書受付戸数は20万戸を突破した。わが国の年間の分譲マンション着工戸数は2005年度が約23万戸、2006年度が約24万戸だから、設計住宅性能評価書はほぼ一巡しているといえよう。
それに対して、建設住宅性能評価書を取得している物件は2006年度で約16万戸。まだ建設住宅性能評価書を取得していないマンションも少なくないのが現実。だからこそ、建設住宅性能評価書を取得している物件に重みがあるともいえる。
以上のように、中古マンション選びにおいては、性能保証が義務化された2000年4月以前か以降かが、評価ポイントのひとつの分かれ目になる。さらに、分譲時に性能表示制度を利用し、なかでも建設住宅性能評価書を取得している物件を選ぶのが安心。
築浅の中古マンション購入を考えている人は、特にこの点に留意しておくべきだろう。
●住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)関連年表 |
1999年6月 |
住宅の品質確保の促進等に関する法律案成立 |
2000年4月 |
住宅の品質確保の促進等に関する法律施行性能保証制度実施 |
2000年12月 |
新築住宅の性能表示制度実施(表示内容は9分野) |
2002年12月 |
既存住宅(中古住宅)の性能表示制度実施 |
2005年9月 |
新築住宅の性能表示制度の表示項目に「防犯」を追加(表示項目は10分野に) |
|
●マンションの設計住宅性能評価書受付戸数と建設住宅性能評価書取得戸数の推移 |
|
|
(資料:国土交通省) |