■ケース6)30代 妻は非正社員カップル
プロフィール/夫(32歳・正社員・年収550万円)、妻(30歳・派遣社員・年収250万円)
資金計画/物件価格3800万円・頭金800万円・住宅ローン3000万
前回(第6回)で紹介した資金プランは、夫婦ともに正社員でばりばり稼いでいるケースでしたが、今回は妻が派遣社員や契約社員、パートタイマーなどの非正規雇用のケースです。最大の違いは、妻が単独で住宅ローンを借りるのが難しくなるという点。正社員に比べると、収入の安定性に欠けるというのが理由です。
また、無理して妻が住宅ローンを借りてしまうと、出産等で働き続けることができない危険性があるだけでなく、雇用が継続されない危険性もあるので、住宅ローンの返済が滞るリスクを伴います。そこで、夫の収入に妻の収入を上乗せする「収入合算」を利用することを考えましょう。
■資金プラン:夫の名義で住宅ローンを借りるが、妻の収入を合算する
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借 入 額 |
返済期間 |
金 利 |
毎月返済額 |
フラット35 |
3000万円 |
30年 |
2.99% |
12万6319円 |
※みずほ銀行の平成20年10月時点のフラット35の金利で試算
収入合算とは、夫婦や親子など同居予定の家族に安定した収入があれば、その収入を加えることができるというものです。具体的にフラット35を借りる場合で見ていきましょう。
●夫の年収だけだと
年収550万円(毎月返済額11万4583円)の場合、借りられる住宅ローンの額は 2710万円 |
●妻の収入を合算すると
年収550万+250万円(毎月返済額16万6666円)の場合、借りられる住宅ローンの額は 3950万円 |
※返済負担率25%、ローンの金利3%、返済期間30年で試算した場合。実際には、フラット35の借入額は年収が400万円以上なら返済負担率35%まで可能
夫の年収だけでは、借入額が少なくなる場合がありますが、妻の年収を合算することで、借入額を増やすことができるのです。つまり、妻の収入を住宅ローンに活用することができるというわけです。
また、フラット35の場合は、収入合算した妻は「連帯債務者」になります。妻は夫と同等にローンを返済する義務を負いますが、共有名義にできるので「住宅ローン控除」を夫婦ともに受けられるといった面もあります。
次に、銀行などの住宅ローンの場合で見ていきましょう。銀行などの場合は「所得合算」と呼ぶこともありますが、フラット35の場合と違って、妻の収入の2分の1だけ合算できるところが多いようです。
●妻の収入を1/2だけ合算すると
年収550万+125万円(毎月返済額14万625円)の場合、借りられる住宅ローンの額は 3330万円 |
※返済負担率25%、ローンの金利3%、返済期間30年で試算した場合
このように、収入を合算できる額によって借りられる住宅ローンの額が変わります。返済負担率を30%など高めに設定したり、返済期間を最長35年まで延長したりすれば、借入額を増やすこともできますが、派遣やパートなどのやや不安定な収入に頼った返済計画にしても、問題ないかをよく考える必要があるでしょう。
また、銀行の場合は、一般的に妻は「連帯保証人」となります。この場合、妻が住宅ローン控除を受けることはできません。
収入合算の場合でも、妻の収入が安定的であることを示す「納税証明書」などが必要ですから、収入が少ないなどで合算できない場合もあります。収入合算の制度については各金融機関によって違いがあるので、利用する際には、事前に確認しておきましょう。
ちなみに、妻が単独で住宅ローンを借りたい場合は、派遣社員でも安定した収入があれば、フラット35が借りやすいでしょう。一部の銀行で派遣や契約社員向けのローンを用意している場合もありますが、通常の銀行の住宅ローンは、借り入れが難しいと思います。でも、フラット35の場合は、1つの物件で1人しか住宅ローンを借りられませんから、妻がフラット35を利用すると、夫は利用できない点に注意しましょう。
●連帯債務と連帯保証について
連帯債務の場合は、夫婦共同で住宅ローンを借りることになり、どちらも借り入れの当事者となります。一方、連帯保証の場合は、夫が借りる住宅ローンの返済を妻が保証することになり、借り入れの当事者は夫のみです。住宅ローン控除の適用などが異なるのは、こうした定義の違いによるのです。
厳密には違いがあるものの、住宅ローンの場合は、いずれの場合も返済責任に大きな違いはありません。金融機関は、夫と妻のどちらにも住宅ローンの返済を請求できますし、マンションを担保に取っているので、ローンが返済されやすい仕組みになっているのです。
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