中立・公正に調査・評価して、東京圏の優良な中古・新築マンションをご紹介

トップページ 運営団体 サイトマップ 利用規約 プライバシーポリシー
マンション評価ナビ 日本初の中古マンションの調査・評価情報サービス。国土交通省「超長期住宅先導的モデル事業」に採択されました。マンション評価情報は広告ではありません。 サイト内SEARCH キーワードで探す
中古マンション 新築マンション 不動産会社情報 評価者ブログ 選び方ノウハウ 初めての方へ

マンションの注文建築「コーポラティブハウス」vol.80 


都心・安い・自分仕様
コーポラティブハウスの魅力

都市景観を語る言葉 (11)ほんのさわり

(株)アーキネット代表 織山 和久

 都市景観を語る言葉、今回は、「ほんのさわり」をとり上げてみよう。皮膚感覚に馴染む街、そうした街の特長を考えてみた。

 生物の発生や進化の段階を考えれば分かるように、皮膚自体が感覚器官でかつ情報処理機能が備わっていて、第三の脳とも呼ばれている。おそらく皮膚感覚に心地良い街は、無意識に好ましい印象を与えているのではないだろうか。

地に足がついている

 裏は、路面の情報を集め、姿勢を制御する大事な部位だ。路面について、ちょっとした凹凸、路面の堅さ・柔らかさ、傾き、グリップ感などを鋭敏に感じ取る。この感触に応じて、歩く姿勢や足の力の入れ方、膝や足首の角度や締め方などを即座に調整し、無意識のうちに滑らかで疲れない歩き方になる。

落ち葉の覆う小径。踏みしめる感触が気持ちいい。

公園の散歩道。子どもたちは駆け出し、木登りで遊ぶ。

居合わせた犬をなでる。笑顔がこぼれる。

店先に並ぶ果物。思わず手に取ってみたくなる。

 こうした路面の情報が豊かな場合には、歩くうちに心地よい刺激が加わり、路面の変化に対応するうちに心身の自律調整能力が高まっていく。落ち葉が表土を覆う道は、じんわりと弾力があって足裏に優しい。落ち葉の下の凸凹や傾きに備えて、少し膝や足首にゆとりを持たせて、味わうように踏みしめていく。枯れ枝に足をとられないようにつま先も上がる。これが自然の歩き方である。樹木の間から、潤いを含んだそよ風が頬に当たる。こうして体性感覚が蘇る。一方、平らで均質なアスファルト舗装面では、そうした感覚は鈍ってしまう。 ざらざらとした土の路面では、子どもたちは思わず走りたくなるようだ。着地してもほどよい柔らかさがあり、急に止まってもザーッと滑って衝撃が和らぐ。こんな路面の情報を子供たちは素直に足裏で感じ取って、喜んで走り出すのだろう。
 こうした道がいろいろ通じている街は、地に足がついている、と積極的に評価してみたい。

手ざわりがいい

 歩道に沿った樹木も触り心地が良さそうで、楽しそうに木登りを始める。手足の皮膚感覚や体内感覚は全開だ。そして路上にモフモフの犬を見つけたら、ニコニコとなでなでしようと近づく。モフモフの触感は、世界が優しく温かいものだ、という感覚を子供心にももたらすようだ。
 大人にとっても、街の手ざわりは大事だ。沿道の店先に、果物や野菜、鮮魚などが並べられている。その気になれば、手に取ってその感触を確かめることができる。お店の人とも、鮮度や食べごろ、生産者などの話を交わし、気に入ればこれを手渡しする。品物をごまかしたり、くすねたりしない、という暗黙の信頼感がそこにはある。それだからこそ、こうした店頭陳列のお店が並んでいると、わたしたちは無意識のうちに「ふれあいのある」街として親しみを覚える。

木塀の続く歩道。手をついた感触も優しい。

 区画を囲う塀や壁の材質も、その触感によって街の印象が左右される。ブロック塀の堅くざらざらして、冬は冷たい感触は、沿道の人たちの気分を無意識のうちに塞ぐ。単に見た目だけではなさそうだ。一方、例えばこれが木塀であれば、何かのときに手をついたとしても、柔らかい感触で肌に温かい。おそらく無意識のうちに安心感を与えているのではないだろうか。このように手のひらにも優しい街、例えば、頼りになる樹木がある、モフモフが機嫌よく行き交う、店頭の品物を手に取れる、塀や壁の感触が温かい、という雰囲気があるときに、この街は手ざわりがいい、と表現できるだろう。このように、地に足がついて、手ざわりのいい街は、皮膚感覚にとって心地良いために意識しないうちに好ましいと感じさせる。

ほんのさわり

茶店の前を芸妓さんがはんなりと歩く

祇園の街並み。石畳と、木格子、土壁、簾といった触り心地のいい素材で構成される。

 京都の祇園では、こうした皮膚感覚が大事にされている。ふれ合う、和む、開放される、といった感覚がこの街の魅力だからだろうか。舗道は微妙に傾きが異なる石畳、おこぼを履いた芸妓さんたちがバランスと取りながら、はんなりと歩く姿が映える。おとなのモフモフである。低層の街並みは、石畳に日差しを落として、足裏も温かそうだ。建物の前面は木の格子で、触り心地も優しくみえる。茶店の入り口には暖簾がかけられ、その軽やかで優しそうな手ざわりが、道行く人々を店内に誘う。祇園の魅力の、ほんのさわりである。
 街並みや都市景観というと、視覚的要素が中心になりがちだ。でも皮膚は第三の脳、無意識に、大脳知覚より優先で、その印象を決定づける。そう考えると、皮膚感覚に心地よい街をもっと大事にしたい。地に足がついた街、手ざわりのいい街。自分たちの体性感覚も蘇る。

筆者プロフィール
株式会社アーキネット代表。土地・住宅制度の政策立案、不動産の開発・企画等を手掛け、創業時からインターネット利用のコーポラティブハウスの企画・運営に取組む。著書に「東京いい街、いい家に住もう」(NTT出版)、「建設・不動産ビジネスのマーケティング戦略」(ダイヤモンド社)他。

コラムサイト 変わる暮らし・変わる住まい
マンションの注文住宅「コーポラティブハウス」
コーポラティブハウス募集プロジェクト情報

マンション評価こぼれ話