中立・公正に調査・評価して、東京圏の優良な中古・新築マンションをご紹介

トップページ 運営団体 サイトマップ 利用規約 プライバシーポリシー
マンション評価ナビ 日本初の中古マンションの調査・評価情報サービス。国土交通省「超長期住宅先導的モデル事業」に採択されました。マンション評価情報は広告ではありません。 サイト内SEARCH キーワードで探す
中古マンション 新築マンション 不動産会社情報 評価者ブログ 選び方ノウハウ 初めての方へ

マンションの注文建築「コーポラティブハウス」vol.75 


都心・安い・自分仕様
コーポラティブハウスの魅力

都市景観を語る言葉 (6)木陰さまです

(株)アーキネット代表 織山 和久

 都市景観を語る言葉を充実させて、少しでもよい建築や街並みができるようにしたい。そこで前回までの「恥ずかしい」「和む」「盛りすぎ」「謙虚」「水が合う」に続き、今回は「木陰さまです」を選んでみた。

第一京浜沿道
片道三車線の沿道に中高層にビルディングが建ち並ぶ

ツタで覆われた建物。ガチャピンではない

旧山手通り「都立一商高」交差点
歩道にエンジュが植えられ、三層の建物群を彩る

 街路樹は、道路の緑化の主役である。樹木の下では日差しや雨足も和らぎ、一息つける。樹木の間を抜ける風も心地よい。季節の移り変わりとともに、新芽が息吹き、新緑が映え、色づいて、そして落葉して輪郭が浮かび上がる。こうして沿道のさまざまな建物を彩り、無表情な道路に味わいをもたらしてくれる。

(1)木で鼻をくくる

 でも、単に街路樹が並べばいいというものではない。ビルの高さ、道の幅に対して、樹木が小さすぎて、まばらでは何か気の毒な感じすらしてしまう。高さや位置も凸凹して、外観を揃っていないビル群に対し、街路樹は足元にも及ばず、お化粧でいうコンシーラーの役割も果たせない。建物が小ぶりなら、ツタを絡ませて隠すこともできるが、これほど大規模な建物では難しい。
 道路も片道三車線で視界の大半を占めて、無機質な表情が剥き出しである。殺伐とした気分がぬぐえない。これでは街路樹は足元のゴミのようで、刺身のつまにもならない。こうなると都市緑化といっても、木で鼻をくくったような単なる予算消化の作業にしか見えない。

(2)七難隠す

 路樹の高さが、建物の高さを上回るような街並みは、気分を穏やかにしてくれる。人間は木よりも高いモノには、畏れを抱いて緊張を強いられるものなのだろう。密に並んだ街路樹たちは、不揃いな建物の外観や位置、大きさもそっと隠してくれる。以前、評判のいい街並みを世界中で探して共通点を探ったところ、建物より街路樹が高いこと、だったそうだ。緑が連続していて、目にも優しい。ビル風もなくて、木陰が気持ち良さそうな雰囲気である。
 でも、道幅は片道二車線あるので、やはり無機質な表情は隠しきれない。反対側の街路樹と重なってくれば、もっと緑に囲われた感じになるのに、ちょっと残念である。

(3)木陰さまです

中杉通り
ケヤキの大樹群が緑のアーチをつくる

世田谷区深沢の桜並木
街全体が人間に馴染む大きさで、桜並木が映える

 道幅と樹木の高さが同じくらいになると魅力的だ。両側の街路樹が育って、重なるようになると街の風情は豊かになる。建物群は木よりも低いので、粗が隠せる。道幅と左右の樹木はちょうど正三角形をなして、緑のトンネルのようだ。視界の大半を緑が占めてくれる。無表情だった道路面には、木漏れ日が反映されて優美で繊細な表情を示す。夏の日中は、アスファルトの表面は60~70℃にもなって照り返しがきつい。でもこのように木陰が路面を覆うと、気温と変わらない程度まで暑さが和らぐ。街の人々にとっても過ごしやすい。ちなみにこのケヤキは、沿道の和菓子屋の坂井寅三郎氏ら有志が自分たちで資金を集めて、1954年から左右60株づつ植えたものである。そして皆で手入れして、落ち葉が面倒、工事の邪魔などという声に対しても緑の街にしようという思いを伝え、「抜いた木は一本もありません」として長年育てられた。沿道に木陰の潤いがあるのも、こうした先人たちのおかげ様である。

 幅4mちょっとの生活道路でも同様で、道幅と樹木の高さが同じくらいだと心地が良い。もちろん建物の高さは、木よりも低い。この街路樹はサクラで、開花の時期にはなかなか賑わう。でも実は、サクラは花が散った後や、毛虫、落葉などは、掃除や手入れも結構大変である。でも街の人々が、この並木を大切に思ってずっと丹念に手入れされているので、こうした街並みがつくられている。

 このように木陰が気持ちの良い都市景観ができるのは、沿道の建物高さや道幅を抑えながら、長年にわたって樹木を手入れしてきた周辺の人々のおかげ様なのである。そういうわけで、街路樹が映える街並みを見たら、あるいは強烈な日差しや雨を和らいでもらったら、略して「木陰さまです」と呟いてみよう。

筆者プロフィール
株式会社アーキネット代表。土地・住宅制度の政策立案、不動産の開発・企画等を手掛け、創業時からインターネット利用のコーポラティブハウスの企画・運営に取組む。著書に「東京いい街、いい家に住もう」(NTT出版)、「建設・不動産ビジネスのマーケティング戦略」(ダイヤモンド社)他。

コラムサイト 変わる暮らし・変わる住まい
マンションの注文住宅「コーポラティブハウス」
コーポラティブハウス募集プロジェクト情報

マンション評価こぼれ話