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マンションの注文建築「コーポラティブハウス」vol.61 


都心・安い・自分仕様
コーポラティブハウスの魅力

大規模マンションの社会的費用 (3)ヒートアイランド

(株)アーキネット代表 織山 和久

 大規模マンション群は風の道を塞ぐ。夏には、都市をヒートアイランドにする。
 夏の日中、海風の温度は市街地より3〜5℃低い。海風の厚みは300mにも及ぶ。東京もそうだが大都市は臨海部にあるので、都市の風通しが良ければ、この海風がヒートアイランドを防いでくれる。
ところが、この海風の通りを妨げるような都市構造が問題である。衝立のように並ぶ高層ビル群である。品川の高層マンション群、汐留の高層オフィスビル群の遮断作用については、話題にもなった。風洞実験*1では、汐留の高層オフィス群が夏の日中の海風を遮って、上空風速6m/秒に対してビルの裏側では風速変化比0.2(風速1.2m/秒)以下の領域が広がることが確認されている。近年のスーパーコンピューターによる解析結果*2も、高層ビル群の敷地内では空地がある分、海風が通り抜けて気温は低い一方、風下の新橋・銀座地区では弱風状態で気温も高いことが分かった。夏の屋内も風通しが良ければ、体感温度を7〜9度下げる効果がある*3のだから、風速変化比0.2では体感温度で6℃強上がることになる。風下に暮らす人々の暑苦しさは相当だ。このように風遮断によって大きな影響を受けるのは、建物高さの概ね5倍の範囲になる。高層マンションの階高は3m、海風は南風で各住戸は南面採光なので一戸当たりの間口を5.4mとすると、高層マンションの一戸当たりが風を遮ることで影響を与える面積範囲は、3m×5×5.4m≒80m2となる。

 このヒートアイランド現象を緩和する対策としては、地上緑化や屋上緑化が想定される。植物の蒸散作用で地表の気温が下がるために、周りから風が入り込む作用が期待されるので、風遮断効果への対策としては冷房利用などよりも妥当であろう。費用対効果を調べると、密集市街地(建蔽率80%超)において建物余地の50%を緑化する対策では、1m2の気温を1℃下げるのに11,685円と試算されている*4。屋上面積の50%を緑化する対策では同3,734円だが一般住宅では実現は難しそうだ。
 以上から、大規模マンションの風遮断による社会的費用が試算できる。
80m2×11,685円/℃・m2×6.4℃≒600万円
 高層マンション群は、海風を遮って建てられると、風下の住民を夏中暑苦しくするという精神的・身体的苦痛を強いる。この苦痛を補償するには、マンション一戸当たりに換算して600万円を支払う必要があるということになる。もっとも日照権と違って、通風権については議論されたこともないが、これだけの社会的費用がかかっていることは認識しておいた方がいいだろう。

*1 成田健一「汐留エリアの高層ビル群による風環境の変化に関する風洞実験」2006
http://leo.nit.ac.jp/~narita/profile/paper/2006aijg_shiodome.pdf
*2 足永靖信「都市域の風通しとヒートアイランド緩和」2006
http://www.kenken.go.jp/japanese/research/lecture/h18/text/03.pdf
*3 赤林伸一、村上周三、加藤信介、小林信行、服部孝博「住宅の通風に関する実験的研究 1983
*4 笠井健弘「屋上・地表面被覆における各種ヒートアイランド対策の費用対効果」2008
http://www.see.eng.osaka-u.ac.jp/seege/seege/material/2008/b/B4.pdf
筆者プロフィール
株式会社アーキネット代表。土地・住宅制度の政策立案、不動産の開発・企画等を手掛け、創業時からインターネット利用のコーポラティブハウスの企画・運営に取組む。著書に「東京いい街、いい家に住もう」(NTT出版)、「建設・不動産ビジネスのマーケティング戦略」(ダイヤモンド社)他。

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