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マンションの注文建築「コーポラティブハウス」vol.58 


都心・安い・自分仕様
コーポラティブハウスの魅力

木造・戸建ての社会的費用 (5)良い戸建て、悪い戸建て

(株)アーキネット代表 織山 和久

良い木造戸建て

 都内にも、美しい木造戸建てがときどき見受けられる。伝統的な様式を尊重しながら、当時の意匠・技術をそれとなく埋め込んだ建築である。伝統的な建築作法を備えているせいだろうか、社会的費用も最小限に抑えられている。
 建物は境界から6mほど離して、延焼を起こさない位置につくられる。その上に周囲には樹木を揃えて、火災による輻射熱を遮断できる。道路側には竹の柵や生垣を回し、ブロック塀のように倒壊して避難路を閉塞させるようなことはない。建築の意匠面でも、高さや大きさを控えめにして、面やブロックも丁寧に分節して、街並みを引き立てている。建具の繊細な表情が静かに個性を表して、単調さも免れている。街に対して開いている建築なのが特長である。そして建蔽率40%・容積率80%といった郊外の建築条件に従って、土地も十分に利用している。

 おそらく大工や建具職人たちが伝統的な建築技術を継承していく中で、身体に刻み込まれた建築作法の現れなのだろう。江戸時代以来の大火や震災の経験を生かした防災上の工夫、何世代も住み続けられる空間構成や構造、地域社会に受け入れられる建て方、といった時の試練を経た建築作法が確立し、大工や建具職人たちに共有される。作法に背くような建物では、社会的費用が嵩むので地域社会の中で受け入れられないし、そんな建て方をすると職人さんたちが仲間外れにされたのだと思う。繰り返しゲームによって社会規範が成立した例で、私たちが「町屋の続く景観や里山の風景が美しい」「正直で努力を怠らないのが正しい」「お互いに助け合う姿が素晴らしい と感じる事柄にはこうした理由が背景にある*1

悪い戸建てが蔓延する訳

 残念ながら、以上のような良質の木造戸建ては、いまではごくわずかしか残されていない。原因は、不出来な建築基準法と安直な在来工法、そしてエージェント問題にある。
 1950年に制定された建築基準法は、空襲で焼け野原になった土地に最低限の衛生・居住水準の住宅を大量に供給するのが目的だった。とりあえずという目的なので条文からは、境界線から6m以上離す、建物周辺に高木を植える、境界には生垣を設ける、量感を抑えて面を分節化する、周辺の街並みに意匠を調和させる、といったような大切な建築作法はごっそり抜け落ちた。戦後、私権の絶対性が強調され、「法規さえ守れば」と木造戸建ての建築はほぼ野放図に自由になった。実際は法規を違反するのも常習化し、検査済証交付率は33.1%(東京都、平成9年度)に過ぎなかった*2。社会的費用を抑えようとする暗黙の社会規範は、施主には割高につくので当たり前のように無視される。東京の環状七号線沿いには震災リスクが深刻な木造密集地域が広がっているが、これらの老朽家屋は東京大空襲の後に被災地や復興事業地の外側に「とりあえず」建てられてまま残されたモノである*3

 施主がわがままでも、年期の入った大工や建具職人がたしなめたりできていれば、良い戸建てになっただろう。でも通産省が推進した工業化住宅の影で、在来工法も変質した。熟練を要せず安価な工業住宅に対抗するために、地元の工務店もモデルルームに見に行って住宅メーカーの簡素な作り方を、自分で性能テストもできないままに安直に真似するようになった。熟練の大工は隅に追いやられ、建具職人もアルミサッシの普及で転職を余儀なくされた。受け継がれてきた建築作法は急速に失われた。戸建ての社会的費用に配慮する大工や職人がほとんどいなくなった訳だ。
 決定的だったのが、建売住宅の登場だった。住まいは、従来は施主が大工に頼んで「つくる」ものだったが、建売住宅の登場で業者から「買う」ものに転換した。大工に直接頼む「つくる」形であれば、施主の意向通りで費用明細も明らかで納得づくである。施主の利害はそのまま直かに反映される。でも「買う」となると違ってくる。業者は、安くつくって高く売り抜ける、という利害で動く。大工の発注者は業者であって買う側ではない。業者にとっては、長く愛用されることよりも新築時の見栄えが大事だし、見えない部分に念入りに手間暇はかけたくないし、費用の明細や工事の実態は明かさない。社会的費用などには目もくれない。買う側は、一生住めるように、基礎や構造もしっかり、細部まで納得のいく仕様で、という利害なのだが、業者の利害とは相反してしまう。でも「土地付き一戸建てだから」と人気は相変わらずだ。でも買った住宅商品は、従来の良い戸建てとは似ても似つかぬ代物である。十数年もすれば結果は明らかだ。区画が狭すぎて建て込んでいるので、土地付きであっても建替えも難しい。

木造戸建てのこれから

 木造戸建ての社会的費用(一戸当たり)は、火災リスク分200万円、倒壊リスク分100〜300万円、景観劣化分1,300万円、都市空間の無駄遣いで1,300万円、と最大で3,000万円にも及ぶ。周りの人びとに、これだけの経済的負担を黙って押し付けている、というのが実態である。本来であれば、火災保険や地震保険に加入し、景観条例を守るために工事代を上積みし、固定資産税をまっとうに払う、ということでこうした社会的費用を負担するものだが、諸制度の不備から負担を免れている。特に都市部では「戸建てが一番」などという認識は改めておきたい、人様にご迷惑をかけて一番と言うものではない。
 それでは、社会的費用をかけないような木造戸建てはどんなものだろうか? 

  1. 郊外 木造戸建ては都市部には向かない。延焼リスクは高く、倒壊で避難路を塞ぐ恐れもある。境界線から6m離せば、こうしたリスクは避けられるが、それでは土地の高度利用を妨げる。都市部には、鉄筋コンクリート造の低層集合住宅がふさわしい。東京圏でいえば、都心から20km圏よりは外側の郊外、境界線から6m離して建てられる場所に求めるべきだろう。自宅から延焼させずに済むし、自宅を延焼させずに済む。
  2. 設計 業者から買わない。つくる。その専門家である建築家に依頼する。依頼するときには、街並みを良くするような建築を、としっかり伝える。優れた建築家であれば、念入りに周辺環境や敷地を調査して、配置、構成、様式や素材、色合いなどを総合的に検討して、この要望に合った意匠を建物に与えることができる。自分の住宅が原点になって街並みが良くなれば、一帯の資産価値が上がるので自分にも還ってくる。
  3. 植栽 建物の周りには高木を植えて、大事に手入れして大きく育てる。建物は樹木より高くしない。街並みをつくり、夏には木陰を冬には風よけになるし、輻射熱を遮って延焼防止にもなる。落ち葉の掃除が大変などと考えない。また境界線には地域一帯で生垣をつなげる。倒壊の恐れのあるブロック塀や閉鎖的なフェンスを設けるものではない。

 震災以後、社会との結び付きについて「前よりも大切だと思うようになった」と答えた人が79.6%に上ったそうだ*4。もしそうであれば、自分の住まいについても社会的費用を抑えるように行動したい。戸建神話はもう終わりにしよう。

*1 M.Kandori,”Social Norms and Community Enforcement”1992
*2 東京都「第三次東京都建物物安心安全実施計画」2006
*3 高橋厚信ほか「木造密集市街地の形成過程とその構造特性に関する研究」」2004
*4 内閣府「社会意識に関する世論調査」2012.
筆者プロフィール
株式会社アーキネット代表。土地・住宅制度の政策立案、不動産の開発・企画等を手掛け、創業時からインターネット利用のコーポラティブハウスの企画・運営に取組む。著書に「東京いい街、いい家に住もう」(NTT出版)、「建設・不動産ビジネスのマーケティング戦略」(ダイヤモンド社)他。

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