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マンションの注文建築「コーポラティブハウス」vol.41 


都心・安い・自分仕様
コーポラティブハウスの魅力

場の理論(3)
ミクロ環境を生かす

(株)アーキネット代表 織山 和久

 人に個性があるように、土地にも個性があります。人それぞれの個性を無視して、画一的に型にはめようとするのはいまどき考えられません。ところが土地については残念のことに、そうした個性を無視して「全戸南向き、3LDK」と場所がどこでも大した違いのないような外観や間取りの分譲マンションがほとんどです。
 じっくりと土地の様子を見て感じてみましょう。そこにはゆるやかに風が通る道があり、大事に育てられた樹木が並び、敷地の中にも高低の変化がある、隣が空地、といったように様々な特徴があります。建築家と創るコーポラティブハウスであれば、このような土地の個性を魅力として生かすテーラーメードの計画ができます。そして、この土地ならではの魅力を生かした計画が、暮らしの空間を豊かにすることは言うまでもありません。このような土地の個性は、ミクロ環境の要素としてとらえてみることができます。
 それでは、ミクロ環境の要素とその事例をご紹介します。

■風道を生かす

 敷地の中に入ってじっと立っていると、優しく頬をなでるようなそよ風が感じられます。風の来る向きも分かります。風の来る向きに目をやると、建物の隙間や通路、駐車場、庭などのちょっとした空地が前後にずっと連続していたりします。昔のあぜ道や裏道、小川などの名残りであったり、一帯の敷地同士の境界線だったりするのでしょう。それがたまたま「風道(風の通り道)」という環境になっています。
 こうした「風道」を配慮せずに建物を建てれば、風の流れは止まり、せっかくのそよ風を一帯の住まいに引きこむこともできなくなります。そうなると空調はエアコン任せ、風鈴も夕涼みも縁遠い、となんとも風情がありません。

 対照的にしっかり建築家が検討すれば、「風道」を生かした豊かな空間が出来上がります。
 右の写真は、「風道」を東棟・西棟の中庭に通した設計で、中庭の奥の樹木はアイストップにもなっています。中庭をすーっと風が通ると、室内の空気も引っ張られ、内から中庭へと心地良い風が流れます。春を告げるそよ風、夕立の後の涼しい風、しっとりした秋風、小春日和の微かな風、と季節の味わいも深まります。体感温度では7度も下がるほどの効果もあるそうです。東京は温暖なので、真夏や真冬でなければ締切ることなく、こうして窓を開いた風通しの良い暮らしが楽しめることがよく分かります。

■高低差を生かす

 敷地内の「高低差」も、内外の空間を豊かにしてくれます。段々を上り下りするごとに、景色の見え方が変化します。上では視界が開けて遠くの朝日が眺められ、活動的な都市の姿も一望できてスイッチが入ることでしょう。ゆっくり下ると、窓の外は木立ちの根元で木漏れ日が味わえて、ゆったりとした自分の時間を取り戻すことができます。「高低差」を生かした空間であれば、気分次第で居心地の良い場所を選ぶこともできます。視界や気分の変化と身体の運動が連動しているのも、自然な感じです。
 逆に敷地内の「高低差」を造成で均し、単純にフラット住戸を積んだようなよくあるマンション計画では、上下の身体移動による視界や気分の変化は味わえるものではありません。気分によって室内環境を変えようとしても、せいぜいが照明をつけたり消したり、エアコンの温度・湿度設定を変えたり、エレベーターで最上階のゲストハウスに出てみたり、というぐらいです。

 右の写真は目白台地の斜面地に、「高低差」を生かすようにつくられたコーポラティブハウスです。坂道に寄り添うように建物が配置され、上階からは南に新宿方面の都市景観が眺められます。北は隣家の足元に当たりますが、敷地内の紅葉の樹木を生かすことで視覚的にも穏やかなクッションとなっています。中ほどのエントランスから少し階段を下ると中庭に入りますが、ちょうど外向けの自分から内向けの自分に穏やかに切り替わるところにもなっています。この中庭を各住戸の入り口が囲み、室内の階段を下ると窓から間近に草木の見える静謐な空間に至る構成です。「高低差」に沿った建物の配置なので、道路から見た姿が低く抑えられ、周辺の街並みにさりげなく調和しているのも注目されます。

■隣地を生かす

 ミクロ環境には、となりの様子も結構影響してきます。手入れの行き届いた立派なお庭が隣にあれば、こちらではお互いの視線に配慮しながらピクチャーウィンドウを設けて、風景を切り取ることもできます。目の前が交通量のある道路であれば、それは採光がとれる、視界が確保できる、そしてなにより街の気配を感じられる、といった土地の魅力とみなすことができます。通行者の視線に配慮しながら、こうした土地の魅力を生かすために、全面ガラス貼りにしてその外周にエキスパンドメタルを配した計画が成立します。

 右の写真は、東隣が小学校の跡地で将来的にも大きく開けた環境が保たれた場所のコーポラティブハウスです。そうした土地の特長を生かせば、東向きを全面ガラス貼りにしたプランが成り立ち、各住戸は東向きの部屋と他の向きの部屋との組み合わせとして構成されます。このようにして室内では朝日を浴びてすっきり目覚め、朝食を味わう、といった健やかな暮らしが営まれています。
 これに対して、もし一般のマンションメーカーの「全戸南向きのフラット住戸」にこだわって計画したなら、味気ない倉庫の外壁を目の前にするだけでこうした健やかな暮らしには至らなかったと思います。もったいないことです。

合間を生かす

 隣地との境界付近にはちょっとした「合間」がありますが、隣との関係次第では魅力を引き出すことができます。民法上は、建物は境界線からお互いに50cm以上空けるようにということですが、あとあと面倒だからと境界線にブロック塀やフェンスを設けて塞いでしまえば、お互いにわずか50cm少々のじめじめと日陰で風通しの悪い無用の隙間ができるだけです。戸建業者やマンションメーカーにとっては境界を巡る面倒や手間暇を避けたいものですから、さっさと定番のフェンスを設置するのが合理的になります。あるいは、見るからに醜悪な建物が視界に入っていや、隣家の住人がよそ者を敵視して話し合いなんて考えられない、といった状況であれば塀で塞ぐのも仕方がないことかもしれません。

 右の写真はそうしたコーポラティブハウスの実例です。境界の向こう側は、隣家やその奥の家の通り道になっていたので、そこを塀で塞ぐのも味気ない、ということで塀やフェンスをつくらずに、こちら側にはお隣と高さの揃った植栽を施して、なかなか和める「合間」が生まれています。外壁から窓を深く縦長にとっているのも、通り道からの視線があまり気にならない点で功を奏しています。また外装も、渋く落ち着きのあるガルバリウム鋼板で覆うことで、隣の家や周囲の街並みに調和させています。こうした設計上の配慮によって、隣地との「合間」を魅力的な場所にすることができるわけです。

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 このようにミクロ環境を詳細に検討すれば、この土地、この場所ならではの魅力を見出すことができます。風道、高低差、樹木、空間、合間といったこの土地の魅力を生かしたテーラーメードの計画ができれば、他には得がたいような味わいのある豊かな暮らしができます。そして、このようにミクロ環境(もちろん、お互いの建物外観を含む)を読み込んだ建築が連続していけば、その地域ならではの美しい都市景観が自律的に形作られることが期待できます。

筆者プロフィール
株式会社アーキネット代表。土地・住宅制度の政策立案、不動産の開発・企画等を手掛け、創業時からインターネット利用のコーポラティブハウスの企画・運営に取組む。著書に「建設・不動産ビジネスのマーケティング戦略」(ダイヤモンド社)他。

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